メディア戦隊レッドテイラーNEO

静岡大学情報学部・赤尾晃一の教育・研究に関するブログ。2017年10月から新装開店。

【電子メディア論2013】プレゼンテーションに対する総括コメント(前編)

学校に限らず,いじめという行為が先にありきで,さまざまな電子メディア(SNS)はそのための手段として使用されているというのは,多くの発表者が指摘する通りである。

ネットいじめが発生した際に,電子メディアの「記録性」もプラス・マイナスの両面がある。

テキストや写真などがネット空間の中に永遠に流れ続け,話題が間隔をおいて蒸し返されるマイナス面はある。裁判所が流通を禁じたとしても,すべての人の情報行動を監視しきれるものではない(監視できるとしたら,それはスーパー管理社会である)。

たとえば大津市の中学二年生“いじめ”自殺事件では,“いじめ”の事実認定の調査そのものが難航し,市長,教育長,教育委員らは批判に曝された。その一方で“いじめた側(加害生徒)”については,ネットの“特定班”によって「個人情報」が曝かれ,さまざまな形でネット空間を浮遊している。その情報はおそらく永久に消えないのだろう。

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ただ,プラス面もある。ネットいじめ(LINE)ではテキストなどが証拠として保全され,関係者(加害者)が特定できる可能性が高いからだ。主として閉鎖空間での対面状況でなされる「いじめ」の事実認定調査は一般的に難しい。目撃者も限られ,関係者が(保身を図って)事実を歪めて陳述する危険性があるからだ。

そうした事実が積み上がっていくと,ネットでのいじめの抑止力になるかもしれない。