【コミュニケーションメディア史2013】5回:中間文化と流行歌の誕生
日本でいつ“流行歌”と呼べるものが誕生したかは諸説ある。
(0-1) 松井須磨子『カチューシャの唄』,大正3(1914)年
作詞は島村抱月・相馬御風,作曲は中山晋平。劇団芸術座の第3回公演『復活』の劇中歌として,主演女優の松井須磨子などが歌唱した。『カチューシャの唄』は蓄音機とレコードの売上げを「万単位」にしたと言えるが,「レコードに吹き込まれた歌の始まり」として捉えるのが妥当だろう。
(0-2) 船頭小唄
1921(大正10)年に新民謡「枯れすすき」として野口雨情が作詞,中山晋平が作曲した。添田唖蝉坊は「俺は東京の焼け出され 同じお前も焼け出され どうせ二人はこの世では 何も持たない焼け出され」と替え歌を作った。大正末期から昭和初期にかけては,全国各地で「新民謡」が作られた。静岡県の『ちゃっきり節』(詞:北原白秋/曲:町田嘉章)も新民謡である。
(1) 添田唖蝉坊 明治~大正年間
基底文化の「都々逸」「小唄」「民謡」など三味線が伴奏するお座敷芸,川上音二郎の政治風刺歌(演歌)「オッペケペー」など大道芸的要素を取り入れ,街道演歌(艶歌)を完成させた。
添田唖蝉坊・ラッパ節 /土取利行 Rappa bushi/Toshi Tsuchitori - YouTube
(2) 音楽学校出身の歌手たち
佐藤千夜子が『波浮の港』『東京行進曲』などでヒットした。
佐藤千夜子 東京行進曲 昭和4年の東京銀座 浅草 - YouTube
(3) 古賀政男の〈古賀メロディ〉
藤山一郎(音楽学校卒)らとのコンビにより,日本の流行歌の基礎を固めたとされる。
藤山一郎 酒は涙か溜息か 1973 - YouTube
(4) 芸妓・芸人出身者
芸妓出身の小唄勝太郎が歌った『島の娘』が日本で初めて50万枚のヒットとなった。29歳だが,芸妓だけに“アイドル的人気”を獲得したと言える。
島の娘/小唄勝太郎 - YouTube
(5) ジャズ(西洋的大衆音楽)
ジャズとは欧米的大衆音楽の音階の総称。日本的音階とは無縁で,新たな時代を思わせた。
君恋し 二村定一 - YouTube
【メディアデザイン論2013】東日本大震災篇4:ラジオ
ラジオは「ライフラインメディア」とさえ言えよう。すべてのメディアが利用できなくなっても,ラジオが生き残っていれば情報の流通はなんとかなる。それも,県域ではなく,コミュニティの放送であるほうがよい。
いつ起こるかわからない災害のためにコミュニティ放送を維持するのは相当に酷な話だ。ただ,日本人が自らの手で災害に立ち向かっていくためには,コミュニティ放送を管理・維持していくためのコストぐらい捻出できなくてはならないだろう。
いつもそばにラジオ石巻 - YouTube
「被災からの復興 ラジオ石巻」 - YouTube
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- 作者: 片瀬京子とラジオ福島
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【メディアデザイン論2013】東日本大震災篇3:ドキュメンタリー
映画『石巻市立湊小学校避難所』 | 映画『石巻市立湊小学校避難所』公式サイト
取材対象に長期間にわたって密着して取材し,その成果をまとめる場合,テレビ(ラジオ)のドキュメンタリー番組は「無料」で提供される。一方,最初から「映画」というフォーマットを採用した場合は,自主上映,映画館での上映を問わず,基本は「有料」で提供される。「有料」であることの意味,あるいは意義って何なのだろう?
波のむこう~浪江町の邦子おばさん~ | NHK 国際共同制作
NHKが国際共同制作したドキュメンタリーでは『波のむこう~浪江町の邦子おばさん~』が秀逸だ。
最もインパクトあるドキュメンタリー映画は『わすれない ふくしま』だろう。
【メディアデザイン論2013】東日本大震災篇2:テレビメディア
「避難時にワンセグを見る余裕はなかった」という被災者の調査結果が多い。むろん,携帯電話基地局の状態に関わらず,ワンセグは受信できる。だから,ワンセグ視聴が習慣化されていないからか,ワンセグ利用に思いが至らなかったからという理由は考えられる。
停電でテレビに頼れない被災者が多い中で,初期報道で何ができたか/できなかったのかを後付けの理屈で論じるのは容易だ。「大津波警報への想像力が足りなかったのではないか」「(少なくとも被災地の県域放送は)『高台に逃げろ』を徹底すべきだったのではないか」などだ。NHK以外の在仙台の放送局が,ヘリコプターを喪失したことが,初動段階での「鳥瞰図」の提供(報道局員や視聴者に対して)に失敗してしまったことは大きい。津波到達時刻が早い地域に一目散に飛び,映像を送信してれば,被害状況は少しは変わっていたかもしれない。
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こうしたDVDをみると,視聴者ではなく,放送局関係者が実に広いエリアで津波の映像を記録しているのがわかる。各地に支局・通信員・契約記者などを配置していたからだ。衛星利用の映像通信も一般化してきている。放送局関係者には優先的に利用を促進していくことも,災害時の迅速な情報収集に役立つのではないか。
- 作者: 丹羽美之,藤田真文
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【メディアデザイン論2013】東日本大震災篇1:活字メディア
県紙/ブロック紙のみならず,全国紙の“物量作戦”に似た報道洪水が目立った。むろん,それは単なる地震・津波の被災だけでなく,稼働中の原子力発電所の“事故”という未曾有の事態に対応したものだ。
- 作者: 河北新報社,河北新報=
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「石巻日日新聞」「東海新報」(大船渡)の地域新聞(コミュニティ・ペーパー)が果たした役割は大きかった。「石巻日日新聞」の壁新聞は確かに新聞の“原点”として賞賛に値する。だが,粛粛と発行を継続した「東海新報」の周到な災害対策こそが本来は絶賛されるべきだろう。
6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録 角川SSC新書 (角川SSC新書 130)
- 作者: 石巻日日新聞社
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壁新聞という点では,気仙沼市立気仙沼小学校の避難所で児童・生徒が発行した「ファイト新聞」も,新聞の“原点”にふさわしい。人々に勇気を与え,エンカレッジするという新聞。「暗い話は書かない」という編集方針で,避難所で暮らす人たちの希望となったのではないだろうか。
- 作者: ファイト新聞社
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/07/06
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橋下徹・日本維新の会共同代表と必要性
テレビがしばしば断片的に言葉を抜き取り,前後の文脈とは無関係に,恣意的に意味付けすることがあるのは事実。ただ,橋下氏が5月13日の会見で「慰安婦制度ってのは必要だ」と述べた箇所の主語は何か。橋下氏は「世界各国の軍隊」と主張する。「慰安婦制度の必要性を自分が認めた」わけがないじゃないかと。
橋下氏は5月17日の囲み会見で「大誤報をやられた」とメディアの報道を批判した。「僕は慰安婦を容認したことは一度もない。メディアは一文だけ聞いて,そこだけを切り取る。(誤解されたのであれば)日本人の読解力不足だ」とも語り、正式な記者会見以外の取材を今後拒否する意向を示した。「必要だったから(世界各国の軍が)皆やってたんでしょ。(自分が)必要と認めたわけではない」と説明。「文脈をきちっと取って報道するのが皆さんの役目だ。『一言一句チェックしろ』というなら(取材対応を)やめます」
橋下大阪市長退庁時ぶら下がり会見ノーカット1(13/05/13) - YouTube
ただ事実と違うことでね、我が日本国が不当に侮辱を受けているようなことに関しては、しっかり主張はしなくては行けないと思っています。だから敗戦国として受け入れなければいけない、喧嘩っていうはそういうことですよ、負けたんですから。
だからそれは当時の為政者に重大な責任があるわけです。負けたんだったらね、そりゃ負けたらね、そりゃいろんなことを……我慢ならんことだってねいろいろ言われることもあるけれども、負けたってことはそういうことなんです。だから負けるような戦争なんかやっちゃいけないんです。そもそも戦争なんかやっちゃいけないけれども。だから負けたってことをすぐさま捨て去れるような、そんな甘いものじゃないですね、けんかをやったってことは。
ただね、事実としては言うべき事はいっていかなくちゃいけないと思っていますから。僕は、従軍慰安婦問題だってね、慰安婦の方に対しては優しい言葉をしっかりかけなきゃいけないし、優しい気持ちで接しなければいけない。意に反してそういう職業に就いたということであれば、そのことについては配慮しなければいけませんが。
しかし、なぜ、日本の従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかというと、その当時、慰安婦制度っていうのは世界各国の軍は持っていたんですよ。これはね、いいこととは言いませんけど、当時はそういうもんだったんです。ところが、なぜ欧米の方で、日本のいわゆる慰安婦問題だけが取り上げられたかというと、日本はレイプ国家だと。無理矢理国を挙げてね、強制的に意に反して慰安婦を拉致してですね、そういう職に就かせたと。
レイプ国家だというところで世界は非難してるんだっていうところを、もっと日本人は世界にどういう風に見られているか認識しなければいけないんです。慰安婦制度が無かったとはいいませんし、軍が管理していたことも間違いないです。ただ、それは当時の世界の状況としては、軍がそういう制度を持っていたのも厳然たる事実です。だってそれはね、朝鮮戦争の時だって、ベトナム戦争だってそういう制度はあったんですから、第二次世界大戦後。
でもなぜ日本のいわゆる従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかというと、日本は軍を使ってね、国家としてレイプをやっていたんだというところがね、ものすごい批判をうけているわけです。
僕はね、その点については、違うところは違うと言っていかなければならないと思いますね。ただ意に反して慰安婦になってしまった方はね、それは戦争の悲劇の結果でもあるわけで、戦争についての責任はね、我が日本国にもあるわけですから。そのことに関しては、心情をしっかりと理解して、優しく配慮していくことが必要だと思いますけど。しかし、違うことは違うって言わなきゃいけませんね。
それから戦争責任の問題だって敗戦国だから、やっぱり負けたということで受け止めなきゃいけないことはいっぱいありますけど、その当時ね、世界の状況を見てみれば、アメリカだって欧米各国だって、植民地政策をやっていたんです。
だからといって日本国の行為を正当化しませんけれども、世界もそういう状況だったと。そういう中で日本は戦争に踏み切って負けてしまった。そこは戦勝国としてはぜったい日本のね、負けの事実、悪の事実ということは、戦勝国としては絶対に譲れないところだろうし、負けた以上はそこは受け入れなきゃいけないところもあるでしょうけど。
ただ、違うところは違う。世界の状況は植民地政策をやっていて、日本の行動だけが原因ではないかもしれないけれど、第二次世界大戦がひとつの契機としてアジアのいろんな諸国が独立していったというのも事実なんです。そういうこともしっかり言うべきところは言わなきゃいけないけれども、ただ、負けたという事実だったり、世界全体で見て、侵略と植民政策というものが非難されて、アジアの諸国のみなさんに多大な苦痛と損害を与えて、お詫びと反省をしなければいけない。その事実はしっかりと受け止めなけれないけないと思いますね。
日本の政治家のメッセージの出し方の悪いところは、歴史問題について、謝るとこは謝って、言うべきところは言う。こういうところができないところですね。一方のスタンスでは、言うべきとこも言わない。全部言われっぱなしで、すべて言われっぱなしっていうひとつの立場。もう一つは事実全部を認めないという立場。あまりにも両極端すぎますね。
認めるところは認めて、やっぱり違うところは違う。世界の当時の状況はどうだったのかという、近現代史をもうちょっと勉強して、慰安婦っていうことをバーンと聞くとね、とんでもない悪いことをやっていたとおもうかもしれないけど、当時の歴史をちょっと調べてみたらね、日本国軍だけじゃなくて、いろんな軍で慰安婦制度ってのを活用してたわけなんです。
そりゃそうですよ、あれだけ銃弾の雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走っていくときに、そりゃ精神的に高ぶっている集団、やっぱりどこかで休息じゃないけども、そういうことをさせてあげようと思ったら、慰安婦制度ってのは必要だということは誰だってわかるわけです。ただそこで、日本国が欧米諸国でどういう風に見られてるかというと、これはやっぱりね、韓国とかいろんなところの宣伝効果があって、レイプ国家だって見られてしまっているところ。ここが一番問題だからそこはやっぱり違うんだったら違うと。
証拠が出てきたらね、それは認めなきゃいけないけれども、今のところ2007年の閣議決定では、そういう証拠はないという状況になっています。先日、また安倍政権で新しい証拠が出てくる可能性があると閣議決定したから、もしかすると、強制的に暴行脅迫をして慰安婦を拉致したという証拠が出てくる可能性があると。もしかするといいきれない状況が出てきたのかもわかりませんが、ただ今のところ、日本政府自体が暴行脅迫をして女性を拉致したという事実は今のところ証拠に裏付けられていませんから、そこはしっかり言ってかなければいけないと思いますよ。
ただ意に反して慰安婦になった方に対しては、配慮しなければいけないと思います。認めるところは認めて、謝るところは謝って、負けた以上は潔くしないと。自民党だって、すぐ武士精神とか武士道とかもちだすのに、負けたのにぐちゃぐちゃいったってしょうがないですよ。負けちゃったんですから。そこは潔く認めて。
ただ、いわれなき事実・根拠のない評価については言うべきところは言う。世界の当時の状況はどうだったのか、それも前面に持ちだしてね。当時植民地政策っていうものがあった。あったんだけれども、日本は戦争して負けてしまった。その中で損害と苦痛を与えてしまったことについてどう評価するのかとういうことは、真摯に考えなきゃいけないし、反省するところは反省しなければいけないと思いますね。
「ビデオ・ザ・ワールド」誌の“廃”刊に際して
安田理央さん ( http://rioysd.hateblo.jp/entry/2013/05/09/112911 ) ほど強くはないにしても,「「ビデオ・ザ・ワールド」誌(コアマガジン)の“廃”刊は「一時代の終わり」を痛感させられる。雑誌という紙媒体で,アダルトビデオ(セル/裏)の情報を扱う時代の終焉。
「ビデオ・ザ・ワールド」は83年末に創刊され,84年11月号から月刊化している。83年は言うまでもなく『洗濯屋ケンちゃん』が登場し,アダルトビデオが時代の寵児となった時期だ。「ビデオ・ザ・ワールド」は当初,アイドルとアダルトの「際」を歩く雑誌だった(月刊化記念号の表紙モデルは田中こずえ)。
コアマガジンには2013年4月23日に,警察が強制捜査に入り,「コミックメガストア」「ニャン2倶楽部」が休刊になった。裏ビデオ情報が豊富だった最近の「ビデオ・ザ・ワールド」も(部数の激減という要因はありつつも),標的の一つとなった可能性は高い。
安易な一般化は慎むべきだが,コアマガジンという成人向け図書の老舗出版社の看板雑誌(さらには会社そのもの)を追い込むことにより,成人向け図書の規制強化を図っているのかもしれない。